素材と色 ー心地よさの提案ー 染色は素材と色のコラボレーション

イメージが湧いてきません。端切で試し染めをしてみてもしっくりこないのです。どうも心が通わない、インドの空気に惑わされたかな?・・でも布はやはり美しい。毎日布をさげ、あれこれ試行錯誤しながら、結局その高価な布は箪笥の奥にしまわれました。
 それから5年以上たったある日、お客様から結婚式に出席するウェアとスカーフのご注文をいただきました。
「華やかなスカーフを引き立てるようなドレスを」というのがお客様のご希望でした。紗(しゃ)の大判サイズのスカーフは水が流れるような白のラインが入った紫がかった茶系、それを際立たせるウェアとなると・・?ふとインドの布を思い出したのです。そして長いこと箪笥の奥で眠っている布を引っぱり出しました。光の中でにぶい光沢を放ちながら布は「さあ、私の出番よ!」と云っているように感じたのです。草木染だ!草木でぼかし染にしよう!と思いました。栗の皮で染められたインドの布は見事な織の風あいもそのまま、シンプルなドレスに仕上がりました「きっと私を待っていてくれたのよ。着るほどにしなやかになる。」イメージとはお客様の言葉で、普段にもずっと愛用して下さっています。
その時気付いたのです。この布を扱うには当時、私の腕が劣っていたことを。高度な技と感性で織られた布は同じレベルの技と感性が無いと受け入れてくれない事を。