素材と色 ー心地よさの提案ー 染色は素材と色のコラボレーション
素材ー布ーを愛おしむ気持ちが色を育みます。
いい布との出会いは人との出会いと同じで、一目惚れするほどハンサムな布もあれば、ちょっと強面だけれど、付き合っていくうちに愛情が湧く布もあります。
布は星の数ほどあっても、心を動かされる布は限られます。「心を動かされる布」とは「心地よく感じる布」です。心地よく感じる布は、無理なく心地よい色のイメージが浮かぶからです。いい布と出会った瞬間に自然に色のイメージが湧き、デザインや用途まで頭の中で一気に組み立てられてしまうほど、出会いのインスピレーションは私にとって重要です。
でも、たまに例外もあります。もう15年以上前の事ですが、インドのベナレスで美しいシルクの布に出会った事がありました。様々な糸の撚り(より)で構成され、不透明な光沢のあるとろりとした質感で触れるとしゃりしゃりと音がしました。こんな見事な素材はかつて見たことがなく、私は興奮し、後先も考えず持っていたお金をはたいて(カードが使えなかったのです!)買い求めました。その布の為に貧乏旅行になってしまいましたが、心はセレブのごとく贅沢な気分で帰国しました。
日本に戻って布を広げてその美しさを堪能しながら、さて、どんな色に染めようか・・・?どうしたことか、いくら考えても
すずき あき
◇東京生まれ
◇桑沢デザイン研究所インテリアデザイン科卒業
◇在学中に出会ったインド更紗(さらさ)に魅了され、染の道を歩もうと決め、染色では最も高度といわれる着物の世界に入りロウケツ染、友禅染を学ぶ。3年間の修業後1975年独立。約10年にわたり着物のデザイン、制作。
◇1984年着物の世界から脱皮しようと日本脱出。イタリア、フィレンツェ大学で再び学生となる。
◇帰国後「あき染色スタジオ」設立。タペストリー、パネルなどによるウィンドウディスプレイ、壁画ディスプレイを手がける。
◇1988年銀座ギャラリーおかりや企画展、日本橋高島屋個展をきっかけにスカーフ、ウェアなどにも手を広げる。
◇その他、染色教室、染色デザイン、スカーフアレンジメント、色彩コーディネイトなどのレクチャーで染色を広める活動をしている。